面接時の重要ポイント

面接するにあたり、事前確認を徹底する

まずネパール人財の経歴としては以下3種類に大別されると思います。
面接では判断しにくい会話力や人財が持つ基本的な性格について、私が10年以上ネパール人財をマネジメントしてきた経験から、この3種類の経歴確認は特定技能ビザを受け入れる上で目安として役立ちます。※あくまで経験談より来るアドバイスと受け取ってください。

①来日経験は無く、特定技能制度が始まってから日本語学習をゼロから開始した人財。
②来日経験は無いが、現地の日本語教育機関等で指導者として教鞭を取った経験の有る人財。
③留学ビザや実習生ビザで来日した経験があるが、何らかの理由でネパールへ帰国した人財。
 
①番の人財について、上記の中では日本語会話力が低い傾向にあります。しかし新卒生や留学ビザ申請から特定技能ビザ申請に切り替えている人財も多くあるので、若い・元気がある・目の前のことに一直線の人財が多いと感じます。もちろん年齢がある程度高い人財もありますが、こちらも新卒にはない経験値(他国でも就労経験がある・その他スキルや資格を持っている等)から来日後の活躍に大いに期待が持てる人財も含まれます。
②番の人財について、ネパール国は正式な統計を公開しておりませんが、現地には留学ビザで学生を送り出すコンサルタントが数千あると言われております。ですから②番のような人財は意外と多く存在しており、彼らは来日経験が無いだけで「指導者」と言う立場に立っていた経験から落ち着いた性格・受け入れ後リーダー格となりメンバーの中心となれる人格の者が多いと感じます。
③番の人財について1度来日を経験していることから、日本での立ち振る舞い・ルールやマナーを知っており、アルバイトや就労を経験しているので一番会話力が高くなる傾向にあります。昨今留学ビザで認められている週28時間の就労時間を超過し、入国管理局よりオーバーワークによるビザ更新不許可で帰国している人財が多くなっております。特定技能ビザではそのようなケースでも問題無くビザ申請・交付を受けることが出来るので、優秀な人財となる可能性を秘めています。

それぞれが持つリスクについて

①番の人財について来日経験が無く日本についてもよく知らない若年層が多くなるため、様々な場面で「知らない・経験が少ない」ことから問題が起こる可能性もあります。東南アジア諸国に多く見られることですが、日本に比べるとネパールも就労環境は色々な意味で「緩く」なっています。来日当初は日本での就労が思いのほか厳しく感じ、ホームシックになったり塞ぎ込む可能性もあります。また経験の少なさから悪い先輩たちの話を鵜吞みにして周りに流されることもありますので、事前の指導と定期的な心のケアが欠かせないでしょう。
②番の人財についても①番の人財と同じことが言える形ですが、ある程度の社会経験があることを踏まえるとリスクは少なくなるでしょう。
③番の人財について来日経験があると言うことで②番の人財同様、企業の中でもリーダー的役割を担える可能性が高くなります。しかし、前回来日時の友人や知人のコネクションから特定技能ビザで就労を始めた企業に不満がある場合すぐに転職先を探すと言ったようなリスクがあるのかもしれません。リーダー格になる人財は紙一重で、全体に良い影響も悪い影響も与える可能性があります。ネパールへ一旦帰国した理由(日本のどこの教育機関や企業を出た・卒業したのか、不法滞在では無かったのか)等もしっかりと事前に調査しておくことが必要です。
 
フロンティア先生
フロンティア
先生

ただし日本人でも、外国人でも、可能性は可能性として様々なリスクは残ります。
一番大切なことは、企業側も彼らの未来を一緒に考え、寄り添う姿勢です。
みなさんの何気ない気遣い・気づきが、彼らの心を動かし長期間働いてもらえる定着率に繋がると言う事を忘れてはいけません。

ネパールの高校・大学卒業証明書等学術記録を確認する

 ネパール人財の総合的な能力を確認する上で役に立つのは彼らの最終学歴に関する「学術証明書」です。
 日本の仕組みと違い、彼らは中学校・高等学校や大学を卒業するためにネパール教育省から開催される「全国統一試験」を全員が受験します。
 日本のセンター試験がそのまま卒業試験になっているようですね。
 総合的な成績から科目毎の能力と言うよりも、人財の持つ「新しいことに対する学習能力」を推し量ることが出来ます。

そもそも、ネパールの教育制度とはどのような形でなんだろう?

フロンティア先生
フロンティア
先生

ネパールでは基本的に1~8年生が基礎教育、9~12年生が中等教育及び、大学学士コース以上の高等教育となっています。10年生終了時と12年生終了時には全国統一試験が行われます。

 ネパールでは、日本で言う高等学校のことを「10+2(てんぷらす2)」または「+2(ぷらす2)」と略称します。
 またネパールの高等学校学科は大別すると以下のようになり、日本のような「普通科」と言うものはありません。

    1.教育学部
  2.  人文学部
    3.  経営マネジメント学部
    4.  科学学部
    5.  GCE A レベル方式学部 (ケンブリッジ大学の教育方式)
    6.  CTEVT (日本の実業高校または専門学校方式)
  
 以上6学科に分かれます。(出典:Nepali answer 英文)
参考までに、+2の卒業時に発行される成績表を右に貼っておきます。
 またネパール国内では西暦(A.D.と省略される)ではなくビクラム歴(B.S.と省略される)で社会が回っており、各種証明書や発行される書式は基本的にビクラム歴で記載されています。
 西暦に変換したい場合は、ネット上での変換サイトで行うといいでしょう。

フロンティア先生
フロンティア
先生

 ちなみに、2022年1月現在はビクラム歴では2078年9月となっています。

・・・西暦の、はるか未来。(笑)


 ネパール人財の強みとしてよく挙げられるのが、小学校1年生から学習が開始されている英語力です。日本語が出来る事はもちろん、英語力もあれば様々な場面で活躍することがありそうですね。
 成績表の中には「COMPULSORY ENGLISH」と表記されており、必修英語と言う意味になります。また「FULL MARKS」が満点の数値で、「MARKS SECURED」が本人の取得ポイントとなります。
科目毎に満点が100だったり75だったりしますが、おおまかに成績が知りたい時は成績表右下「Division(区分)」欄を確認すると良いでしょう。
各試験の総合成績(%)は以下のような区分ごとの評価名称で分けられています。

75%以上がDistinction(最優秀レベル)
60%以上がFirst division(第1レベル)
45%以上がSecond division(第2レベル)
35%以上がPass division(合格レベル)

まとめ

 私が長年留学生の送り出しをいている中で、よく見かけるのはSecond division(第2レベル)で卒業した学生です。
 体感的にはFirst division(第1レベル)の学生は希少な方で10%くらいでしょうか。Distinction(最優秀レベル)ともなると、ほとんど見かけたことがありません。
 統計を取っているわけではありませんが、残念?なことに、やはり彼らの卒業時成績区分が日本語指導の所要時間に大きく比例していることを感じています。
 日本語学習を始めて始めたところから、日本語能力試験の基礎レベルであるN5の取得を目指す場合、

 Second division(第2レベル)の学生は週6日/1日2時間で平均2ヵ月半~3ヵ月の時間が掛かる。
 First division(第1レベル)の学生は同様の指導方法で平均1ヵ月~1ヵ月半で合格となる。

 もちろん個別の人財なので本人の頑張り次第(宿題を頑張る!予習復習を自主的にしてくる等)で時々そうでない者もおります。
 しかしそれらは統計学で言う「外れ値・異常値」と捉えております。日本に渡り、また新たな分野の知識・技能を習得し就労していく上では、面接時の一瞬よりも数年かけてどのように彼らがここまで来たかが分かり易い成績表を確認することも、また一つの評価基準になるかもしれません。